不動産売買登記と耐震基準適合証明書

不動産売買登記と耐震基準適合証明書

不動産売買登記で、築20年を超える木造居宅(築25年を超えるマンション)の購入で、所有権移転登記(+抵当権設定登記)の登録免許税の軽減を受けられますか? 不動産取得税の軽減を受けられますか? 住宅ローン減税の適用がありますか?

結論:原則、登録免許税の軽減を受けられる(減税適用がある)

木造居宅では建築後20年(マンションのような耐火建築物又は準耐火建築物は25年)を超える居宅を「売買」により取得し、住宅用家屋証明書を市区町村役場で取得する場合、令和4年3月31日までは新耐震基準を満たす証明書(耐震基準適合証明書など)が必要でした。
しかし、令和4年4月1日以降に住宅用家屋証明書を取得する場合は、昭和57年1月1日以降に建築(登記上の新築日を基準)された居宅については、「新耐震基準」を満たすものとされました。
このことにより、建築後20年(マンションは25年)以内という建築年数の制限がなくなりました。
したがいまして、不動産売買登記で、築20年を超える木造居宅(築25年を超えるマンション)の購入で、所有権移転登記(+抵当権設定登記)の登録免許税の軽減を受けられます。不動産取得税(都道府県税)の軽減を受けられます。住宅ローン減税(国税・税務署)の適用があります。

ただし、昭和56年12月31日以前に建築(登記上の新築日を基準)された居宅については、ここで説明します「耐震基準適合証明書」を取得できれば、これらの税金の軽減を受けられることになります。

登録免許税の減税を受けるための基本条件

基本的な条件は、住宅用家屋証明書(不動産売買登記の登録免許税の減税証明書)を参考にしてください。
登録免許税の減税を受けるための基本的な条件は、次のとおりです。
1 居住用不動産であること(個人の買主ご自身が居住すること。)
   次の場合には、登録免許税の軽減の適用はありません。
   親が子のために不動産を購入する場合
   投資の目的で、賃貸住宅として購入する場合
2 建物の「登記上の建築(新築)日」が、昭和57年1月1日以降であること。
  令和4年4月1日以降に住宅用家屋証明書を取得し、登記申請する場合、次の建築年数の制限がなくなりました。
  従来の建築年数制限(令和4年3月31日まで)は、
   木造戸建であれば建築後20年以内
   マンションであれば建築後25年以内
  建物の「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前の場合、耐震基準適合証明書などを取得することによって登録免許税の減税適用があります。
3 建物の登記上の床面積が、50㎡以上あること。
4 住宅ローンの借入れで住宅を購入される場合は、
   その借入れが住宅ローンであること、抵当権の設定登記であること。

「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前の場合、原則、不動産売買による所有権移転登記の登録免許税の軽減などの税金の軽減を受けることができません。

ですが、特例として、建物が現在の耐震基準に適合しているものであれば、「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前であっても、耐震基準適合証明書などによって、不動産売買による所有権移転登記の登録免許税の軽減などの税金の軽減を受けることができます。
もっとも、耐震基準に適合していないのであれば、この証明書が発行されないのは言うまでもありません。
この耐震基準適合証明書は、住宅用家屋証明書を取得する際に市区町村役場に提出するものです。
取得した住宅用家屋証明書を登記所に提出することによって、売買の所有権移転登記や抵当権設定登記の登録免許税が軽減されます。不動産取得税も軽減されることになります。
また、住宅ローン減税を受ける場合、確定申告の時期に、この耐震基準適合証明書を税務署に提出します。

「耐震基準適合証明書」の代わりに、住宅用家屋証明書を取得する場合に次の書類を取得しても税金の軽減適用があります。一般的には「耐震基準適合証明書」の方がよいでしょう。
●「住宅性能評価書の写し」(当該家屋の取得の日前2年以内に評価されたもので構造躯体の倒壊等防止に係る評価が等級1~3であるものに限る)
●保険法人が発行する「既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る保険付保証明書」(当該住宅の取得の日前2年以内に契約が締結されたものに限る)

耐震基準適合証明書を取得するには

耐震基準適合証明書の取得は、建築士(建築士事務所に属する建築士に限る)、指定確認検査機関または指定住宅性能評価機関に依頼し、耐震診断を受けて、新耐震基準を満たすことの証明書(耐震基準適合証明書)を取得すれば「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前であっても、不動産売買による所有権移転登記の登録免許税の軽減などの税金の軽減を受けることができます。

「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前の建物は、必ず現地建物の耐震診断をする必要があり(耐震診断の費用は木造で約20万円かかるといわれています。)、その結果、耐震基準適合の判断をされたもの、あるいは、耐震補強工事をしたもの(工事費がかかります。)について、耐震基準適合証明書の発行が可能となります。(実際の耐震診断の方法は建築設計事務所にお問い合わせください。)
ただし、建築設計事務所の耐震基準適合証明書の発行手数料は別途かかります。(下記)

耐震基準適合証明書を取得する場合の主な注意点は、次のとおりです。

  1. 証明書の申請者は、
    申請者は基本的に、売主です。買主ではありません。申請書に記載する住所・氏名は、売主である所有者の住所・氏名を記載します。
    耐震基準適合証明書を取得しようとする場合、買主が現在の所有者(売主)に協力を求めることになります。
    費用の負担は、実際のメリット、税金の控除、減額が買主にあるので、費用は買主の負担とするのが通常です。
  2. 証明書の取得時期は、
    不動産売買による所有権の移転の時(引渡しの日。例えば所有権移転登記日)までに証明書を取得します。
    所有権移転登記の後に証明書を取得しても、使用することができません。
    所有権移転登記が終わった後に耐震基準適合証明書を取得したとしても、登録免許税の還付を受けることもできませんし、住宅ローン減税を受けることもできません。
    ですから、買主としては、不動産決済の前に、売主にお願いして、費用を払って、この証明書を取得してもらいます。
  3. 証明書の種類
    ①不動産売買による所有権移転登記の登録免許税の軽減、②不動産取得税の軽減、③住宅ローン減税、それぞれに使用するため、税制特例の区分に応じて、それぞれ国土交通省所定の証明書3通を取得する必要があります。

耐震基準適合証明書を取得することによる税金の軽減は

耐震基準適合証明書を取得すれば、基本的に手続の順番からすると、
①不動産売買による所有権移転登記の登録免許税(建物)の軽減(抵当権設定登記も)、②不動産取得税の軽減、③住宅ローン減税を受けることができます。

耐震基準適合証明書を取得する場合の費用については、木造家屋の場合、5万円から10万円と言われています。(建築設計事務所により費用が異なります。)

①の 所有権移転登記の登録免許税の減税を受ける場合のみの場合、耐震基準適合証明書を取得するメリットは、場合によってあまりない場合があります。
建物の評価価格が300万円の場合を考えてみましょう。
減税適用がない場合の登録免許税は、
 300万円×2%=60,000円
減税適用がある場合の登録免許税は、
 300万円×0・3%=9,000円
そうしますと、60,000円-9,000円=51,000円
耐震基準適合証明書を取得すれば、51,000円分登録免許税が安くなりますが、建築設計事務所に支払う手数料を51,000円としますと、耐震基準適合証明書を取得する意味がありません。
結局、 ①の 所有権移転登記の登録免許税の減税を受ける場合のみの場合、 「建物の評価価格」と「建築設計事務所に支払うべき手数料」を考慮して、メリットがあれば耐震基準適合証明書を取得することになるでしょう。

住宅ローンが3,000万円の場合を考えてみましょう。

抵当権設定登記の登録免許税は、
減税適用がない場合:3,000万円×0・4%=120,000円
減税適用がある場合:3,000万円×0・1%=30,000円
そうしますと、120,000円-30,000円=90,000円
耐震基準適合証明書を取得して建築設計事務所に費用を支払っても、90,000円お得になるということです。また、住宅ローン減税により、さらにお得になることになります。

耐震基準適合証明書を発行する建築設計事務所への依頼は、直接、お客様にしていただきます。
買主は、不動産仲介業者に、建築設計事務所への手続の依頼をされるとよいでしょう。

結局のところ、耐震基準適合証明書を取得するメリットは

不動産売買登記で、「登記上の建築(新築)日」が、昭和56年12月31日以前の建物(居宅)について、所有権移転登記の登録免許税の軽減(+抵当権設定登記の登録免許税の軽減)、不動産取得税(都道府県税)の軽減、住宅ローン減税(国税・税務署)の適用を受けたいがために「耐震基準適合証明書」を取得するメリットはあるのでしょうか。

上記の説明しましたように、昭和56年12月31日以前の建物(居宅)について、耐震基準適合証明書を建築設計事務所に発行してもらうためには、

  1. まず、建築設計事務所が現地に出向き、その建物の耐震診断を行います。
  2. 耐震診断の結果、問題がなければ(耐震工事が不要と判断されれば)、建築設計事務所が耐震基準適合証明書を発行してくれます。
    建築設計事務所には、①耐震診断の費用と②耐震基準適合証明書発行手数料を支払うことになります。
    したがいまして、昭和56年12月31日以前の建物(居宅)についての①耐震診断の費用と②耐震基準適合証明書発行手数料がいくらかかるのかを、建築設計事務所に、まず最初に確認した方がよいでしょう。
    もし、これらの費用が減税適用となる税金の差額分(メリットとなる金額)を超えるようですと、①耐震診断と②耐震基準適合証明書取得の意味がないことになります。
  3. また、2のメリットがある場合であっても、建築設計事務所が耐震診断を行った結果、「耐震工事」が必要であると言われ、耐震工事をしなければ耐震基準適合証明書を発行できないと言われた場合は、耐震工事をしなければならなくなります。
    そうしまと、耐震工事の費用(いくらになるのか?数十万円から場合によっては100万円?)がかかることになりますので、耐震工事をすることによって、減税適用となる税金の差額分(メリットとなる金額)を超えるようですと、さらに、耐震基準適合証明書を取得する意味がないことになります。

従前(令和4年3月31日以前)、建築年数の制限があった頃、耐震基準適合証明書を取得してもらって住宅用家屋証明書を取得したことはあります。
しかし、耐震工事をしなければ耐震基準適合証明書を発行してもらえないような昭和56年12月31日以前建築の古い建物では、耐震基準適合証明書を取得してもらったことはありませんでした。なぜなら、耐震工事の費用がかかることにより耐震基準適合証明書を取得するメリットがなかったからです。

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ご注意:次の動画は、令和4年3月31日以前に適用があった内容です。現在の内容は、上に説明しました内容となります。