不動産売買登記と売主業者の抵当権の効力の縮減

不動産売買登記と売主業者の抵当権の効力の縮減

不動産売買登記において、売主に、特に、業者が所有する土地を移転登記するときに、業者所有の土地に抵当権や根抵当権が設定登記されている場合があります。

特に、宅地の分譲地の不動産売買では、通常よくあるのが、敷地のほかに、私道やごみ置き場の共有持分を売買の対象として移転登記することがあります。

例えば、買主Aが敷地のほかに、私道の持分を10分の1売買により取得するとします。
この場合の不動産売買名義変更登記について説明いたします。

この場合、不動産売買の名義変更登記は、次の登記申請の順番で行います。

  1. 敷地の抵当権抹消登記
  2. 敷地の売買による所有権移転登記
  3. 私道の売買による持分10分の1の移転登記
  4. 私道に登記された抵当権を業者持分の抵当権とする変更登記

この順番で登記申請します。
次に解説いたします。

  1. 敷地の抵当権抹消登記
    敷地の部分に登記された業者の抵当権は、これを抹消登記します。
    敷地の部分全部が登記上特定されているので、抹消登記することができます。
    1・2の登記の順番は、買主Aへの所有権移転登記を阻害する担保権を先に抹消登記してから、売買による所有権移転登記を行います。
    業者の抵当権を抹消登記する場合の登記申請人は、権利者が業者、義務者が金融機関となります。
  2. 敷地の売買による所有権移転登記
    この場合の登記申請人は、権利者が買主A、義務者が業者となります。
  3. 私道の売買による持分10分の1の移転登記
    この場合の登記申請人は、権利者が買主A、義務者が業者となります。
  4. 私道に登記された抵当権を売主業者持分の抵当権とする変更登記
    私道に登記された抵当権の一部、買主Aが購入する持分10分の1について、抵当権の効力を縮める登記をします。
    私道部分全部を抹消登記しない理由は、例えば、宅地の分譲地が10区画あり、買主Aがそのうちの1区画を購入したが、まだ、9区画が売れ残っている場合です。
    この場合、私道部分全部を抹消登記してしまうと、債権者の金融機関は私道部分についての担保権を失うことになるからです。

ですから、1区画ずつ売れるごとに、抵当権の効力を売れた持分(10分の1)についてのみ、抵当権の効力を縮減する(外す)登記をする必要があります。
もっとも、すべての区画が売却された場合、最後にする登記は抵当権抹消登記ということになります。

そもそも、抵当権を抹消登記する場合、登記上、売主名義のままで抵当権の効力を一部縮減する登記ができません。

売主名義のままでは、抵当権の効力を一部縮減することができないため、登記上は、縮減する持分をまず買主Aに移転登記したうえで、移転登記した持分について、抵当権の効力を縮減する方法をとります。
この場合の登記申請人は、権利者が買主A、義務者が金融機関となります。

不動産売買では、買主への所有権移転登記を阻害する担保権などは先に抹消することが、通常、不動産売買契約書に記載されていますが、この場合は、買主Aへの持分移転登記の後に抵当権を抹消(効力を縮減)することになります。登記上、この方法しかありません。
この場合、

  • 登記の目的は、「〇番抵当権を業者持分の抵当権とする変更」
    「業者持分の抵当権とする」という意味は、買主Aに移転した持分10分の1には、金融機関の抵当権の効力は及ばず、買主Aに移転した持分10分の1の残り、業者の持分10分の9について、あくまでも、業者の持分についてだけ、抵当権の効力が及びます、という意味です。
  • 登記の原因は、「令和〇年〇月〇日買主A持分の放棄(解除)」
    買主Aに移転した持分10分の1について、金融機関は抵当権の効力を放棄(解除)します、という意味です。

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