不動産売買登記の当事者(買主、売主)
通常の、一般的な不動産売買登記の当事者、すなわち、不動産の売買契約を締結するときの当事者は、
不動産を購入する買主と不動産を売却する売主です。
不動産売買登記の買主
買主が複数の場合
不動産を購入する買主が一人で購入する場合、買主一人で不動産の売買契約を締結し、登記手続における登記名義も買主一人の単独名義で登記されます。
不動産を購入する買主が二人以上の場合、例えば、ご夫婦で、親子で、ご兄弟で、など複数で購入する場合は、購入する複数の買主が契約の当事者となります。
買主となる人は、売買代金を支払う人であるので、どういう方法で支払うことになるのか、それは、次の組み合わせとなります。
- 自己資金
- 自己資金+ローン
- ローン
例えば、売買代金を支払う人を増やしたい場合、買主単独名義で売買契約を締結した後、売買代金の最終決済の前に、単独名義を複数名義に変更したい場合、仲介業者や売主業者に連絡し、変更してもらう必要があります。
この場合、合意書という書面に、買主名義を変更する、追加する内容に買主、売主双方が署名、捺印する必要があります。
売買契約書は、売主・買主によって、不動産売買の当事者を明確にする必要があります。
また、売主にとっては、譲渡所得税の申告をする際に必要となります。
買主にとっては、住宅ローンの借入れがある場合や税務署に対する住宅ローン控除の申告の際に必要となります。
さらに、何年後かに買主が不動産を売却する場合、買主が今度は売主となり、売却することにより、譲渡所得税の申告をする際に必要となります。
買主が複数の場合に「登記する持分の決定」
買主が複数の場合、売買契約締結時点では、買主の間の権利の割合が明記されません。
ところが、売主から買主への名義変更登記手続をする場合は、共有者として、持分で、すなわち、何分のいくつ、という分数で登記することになっています。
ですから、買主は、名義変更の登記手続をするまでの間に、お互いの持分を決定する必要があります。
買主の持分の割合を決める方法は、基本的には、不動産の売買代金の額を基本として、自己資金またはローンの金額によって、だれが、いくら出したかによって決めます。
不動産の売買代金は、現金だけの場合、現金と住宅ローンを合わせた場合、などあります。
買主が複数の場合は、売買代金の額を分母とし、買主それぞれが出した金額を分子として、分数の計算をすることになります。
分数の計算では、約分することが普通ですが、約分をすることにより、持分が多くなる買主の増加する持分に対応する金額が110万円を超えないようにします。
110万円を超えてしまう場合は、贈与税の対象となりますので、持分を調整する必要があります。
このことは、登記手続が完了した後、数か月後に、税務署から、不動産購入についてのお尋ね、特に、不動産の購入資金についてのお尋ねがある場合があります。
ですので、買主が複数の場合は、慎重に、お互いの持分を計算する必要があります。
さらに、買主が登記手続を完了すると、その登記の内容は、市区町村、都道府県(都税事務所)、管轄税務署に通知されることになっていますので、買主の名義や持分の決定は、慎重にする必要があります。
具体的な持分の計算は、共有名義で購入する場合の持分計算を参考にしてください。
登記の完了後に、登記した名義に誤りがあった場合や登記した持分を誤った場合は、不動産売買登記と名義変更登記のやり直しを参考にしてください。
親権者:買主が未成年者の場合
買主が未成年者の場合、未成年者の親である親権者が代理人として、売買契約の締結やこれに付随する事項、登記手続をします。
ですので、売買契約書や登記手続に署名、捺印する書類には、親権者が未成年者を代理してします。
署名、捺印する親が、未成年者の親権者であることが必要ですので、この証明をしなければなりません。この証明は、戸籍謄本と住民票(本籍地の記載が必要)で証明します。
買主が親権者と未成年者の二人の場合、親権者が自分の分と未成年者の分の二人を兼ねて署名、捺印します。
不動産売買登記の売主
不動産を売却する売主が一人で売却する場合は、売主一人で不動産の売買契約を締結し、その後の登記手続における登記名義も売主一人で買主への登記手続に協力します。
不動産を売却する売主が二人以上のばあい、例えば、ご夫婦で、親子で、ご兄弟で、など複数で売却する場合は、売却する複数の売主が契約の当事者となります。
売主が複数の場合は、その不動産は共有状態ですので、共有者全員の同意がなければ、売却することができません。
共有者の同意は、不動産の売買契約書に共有者全員が、署名、捺印することを意味します。
親権者:売主が未成年者の場合
売主が未成年者の場合は、未成年者の親である親権者が代理人として、売買契約の締結やこれに付随する事項、登記手続をします。
ですので、売買契約書や登記手続に署名、捺印する書類には、親権者が未成年者を代理してします。
署名、捺印する親が、未成年者の親権者であることが必要ですので、この証明をしなければなりません。
この証明は、戸籍謄本と住民票(本籍地の記載が必要)で証明します。
さらに、未成年者が売主の場合、必要となる印鑑証明書は、親権者の印鑑証明書となります。。
売主が親権者と未成年者の二人の場合、親権者が自分の分と未成年者の分の二人を兼ねて署名、捺印します。
相続登記で名義変更:登記名義人が死亡しているとき
例えば、亡くなったお父さん名義の不動産を売却する場合、お父さん名義のままでは、不動産を売却することはできません。
不動産を売却するということは、不動産の名義を売主名義から買主名義に変える必要があります。
不動産の名義を買主に変えるということは、不動産を管轄する登記所に、売主名義から買主名義に所有権移転登記を申請して、名義を変更します。
この登記申請をするとき、登記の義務者となる売主が、登記記録に記載された名義人と一致していることが必要です。
先の例で、亡くなったお父さんは、当然、不動産の売買契約の当事者にはなれませんので、名義を例えば、その相続人である配偶者や子供に変更する必要があります。
この変更する登記手続きが、相続登記です。
正確な言い方をしますと、亡くなったお父さんの名義をその相続人名義に変更する登記手続が、相続による所有権移転登記です。
では、この相続登記をいつまでにする必要があるでしょうか。
不動産を売却したいときは、通常、不動産仲介会社に行って、不動産を売却したいんですが、と仲介業者様に言います。
仲介業者は、では不動産の媒介契約をしてください、と言います。
そうすると、仲介業者は、その不動産を調査して、いくらで売却できるのか、といったことや不動産を売却するにあたり、問題点を洗い出します。
この問題点の中で、相続登記をしていない場合は、相続人名義に変更する必要がある、と言われます。
買主が見つかると、不動産売買契約を締結することになりますが、亡くなった人名義のままでは、売買契約を締結することができません。
これは、売買契約の当事者である売主が、誰なのか、ということが確定していないからです。
相続人名義に変更する場合、法律の規定とは異なった相続の仕方である遺産分割(誰が何を相続する)で相続する場合はもちろんのこと、法律の規定にしたがった相続、すなわち、法定相続によって相続する場合であっても、売買契約を締結するにあたり、相続人名義に登記をする必要があります。
遺産分割による相続の場合は、例えば、相続人が、配偶者と子供である場合、配偶者だけが相続するという遺産分割は、これを登記しなければ第三者に対抗できません。
すなわち、配偶者が遺産分割によって相続したということを登記しなければ、このことを第三者である買主に主張することができないからです。
法定相続の場合、例えば、配偶者と子供が法定相続分で相続するという場合、法定相続分による相続は、これを登記しなくても第三者に対抗、すなわち主張することができます。
ですから、売買契約締結時点で、法定相続人名義に変更していなくても契約を締結できそうです。
ですが、売買契約を締結するということは、売買契約の当事者が確定していてはじめて締結できますので、その結果、遺産分割による場合も、法定相続による場合も、売買契約を締結する時点までに、相続登記をして名義を変更する必要があります。
通常、不動産の売買契約では、手付金のやり取りで売買契約を締結します。その後、売買代金の精算をするとき同時に、名義を売主から買主に移転登記します。
この名義変更の登記を司法書士が売主、買主を代理して申請します。
相続登記については、相続登記情報館のサイトでご確認ください。
費用については、相続登記費用でご確認ください。
成年後見人:売主が認知症の場合(売主に不動産の売却について判断する能力がない場合)
現在の法律(民法)では、売主は、不動産を売却することについて、自分で判断できる能力がなければなりません。
この能力は、意思能力と呼び、不動産を売却すること、いくらで売却するかなど、基本的に自分で判断することができなければなりません。
売主が認知症の症状により、これらを判断することができない場合には、通常、成年後見人が代理してすることになります。
不動産を売却したいときに、成年後見人がいない場合、成年後見人を選任してもらう成年後見開始の申立を家庭裁判所にする必要があります。
さらに、居住用の不動産については、選任されている成年後見人は、その不動産の売却の許可を別途、家庭裁判所に申立てる必要があります。
売主が認知症で判断能力がない場合に、親族の方が代理して、売買契約の締結や登記手続をしても法律上は無効となります。
必ず、成年後見人を選任してもらって契約などをする必要があります。
この成年後見人を選任してもらう手続には、3か月から半年、さらに居住用不動産の許可にも1か月ほど時間を要しますので、早めに手続をするのがよいでしょう。
成年後見人については、成年後見制度のサイトでご確認ください。
不在者財産管理人:売主が行方不明の場合
現在の法律(民法)では、売主は、登記されている名義人本人が、不動産の売買契約の締結や登記手続を行います。
不動産の名義人ではない人が、これらの行為をすることはできません。不動産の名義人ではない人が、これらの行為をしても、その行為は、法律上、無効となります。
登記されている名義人が行方不明の場合、行方不明の名義人と共有している名義人は、行方不明の人について、家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任を申立てる必要があります。
この不在者財産管理人を選任してもらう手続には、半年ほど時間を要しますので、早めに手続をするのがよいでしょう。
不在者財産管理人については、不在者財産管理人でご確認ください。
相続財産管理人:相続人の不存在の場合(売主がすでに死亡し、法定の相続人がいない場合)
不動産の登記名義人がすでに死亡し、法定相続人を戸籍上探しても見つからない場合(相続人の不存在)は、基本的には、最終的に、その遺産は国庫に帰属することになります。
すでに死亡している登記名義人の不動産を処分する場合には、家庭裁判所に、相続財産管理人の選任を申立てます。
相続財産管理人 が選任されることにより、死亡した登記名義人の不動産は「相続財産法人」となります。
選任された 相続財産管理人 が、死亡した登記名義人の不動産について相続財産法人として、その名義を「亡だれだれ相続財産」に変更登記します。
その後、選任された 相続財産管理人 が、不動産の売買契約や登記手続を行うことになります。
この 相続財産管理人 を選任してもらう手続には、半年ほど時間を要しますので、早めに手続をするのがよいでしょう。
相続財産管理人については、相続財産管理人でご確認ください。
破産管財人:不動産の名義人が破産の申立をした場合
不動産の登記名義人が破産の申立をし、裁判所の開始決定が出ると、破産者の財産は、破産財団となり、破産者は売却など処分することができなくなります。
選任された破産管財人は、破産者の破産財団に属することとなった財産を処分して、債権者に分配することになります。
破産者の不動産についても、破産管財人が裁判所の許可を得て、不動産を売却することができ、破産管財人が、不動産の売買契約締結や登記手続をします。
参照:不動産売買登記と破産物件の登記原因証明情報