真正な登記名義の回復による持分移転登記

真正な登記名義の回復による持分移転登記

相談内容

この度、戸建てを購入し主人が全額ローンを組んで現在返済中です(頭金なし)が、住宅購入にあたり手付金やその他諸々の費用は私が出しました。
現在不動産の登記簿には主人の名前しかなく、こちらを「錯誤による所有権更正登記」で訂正する事は可能でしょうか。
不動産の持分は微々たる割合で良いのですが、共有名義にしたいのです。
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回答

次を参考にしてください。
不動産売買登記と名義変更登記のやり直し
錯誤による所有権更正登記
売買登記名義人(買主単独)の誤り:やり直す方法
売買登記が完了後、「錯誤による所有権更正登記」をしたいが、相続が開始したときは?

ご相談者は、一人名義の単独所有を二人名義の共有に変更する場合に該当します。
登記名義人の変更後の当事者が異なることになります。

ご相談者が希望され る「錯誤による所有権更正登記」の 場合、費用も必要書類・当事者もそれほど多くありません。
この場合の登録免許税(登記申請の際、登記所に納める税金)は、土地・建物の2個で、2,000円です。
ですが、 「錯誤による所有権更正登記」ができるのは、現実的には、例えば、二人名義の共有を、名義人の当事者二人が変わらずに、持分だけを変更(更正)するときにできます。

ご相談者の場合は、一人名義の単独所有を二人名義の共有に変更する場合に該当しますので、「錯誤による所有権更正登記」とで費用を安くすることができません。
また、「錯誤による所有権更正登記」 をするには、登記に必要な書類も、ご相談者ご夫婦だけの書類で登記することができません。

「錯誤による所有権更正登記」で行うことも、理論的には可能ですが、抵当権者の金融機関や前の所有者の協力を得る必要があり、実際に登記するのが難しいのが現状です。

この場合、抵当権者の金融機関には、次の書類を用意してもらう必要があります。
 ① 金融機関代表者の実印が押された承諾書
 ② 金融機関代表者の印鑑証明書
 ③ 追加(抵当権の効力を及ぼす)抵当権設定契約書
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 この登記を行うために、登記費用が5万円ほど、ご相談者が負担することになります。

前の所有者には、次の書類と印鑑を用意してもらう必要があります。
 ① 権利証(もともとあったもの)
 ② 印鑑証明書
 ③ 実印

以上のように、金融機関と前の所有者に用意していただく書類や印鑑が必要となり、また、ご相談者には 「錯誤による所有権更正登記」の費用(実費と報酬を含めた金額:約5万円)と上記、追加(抵当権の効力を及ぼす)抵当権設定登記費用として約5万円、合計約10万円ほどかかることになります。

このように考えますと、「錯誤による所有権更正登記」 ではなく、「真正な登記名義の回復による移転登記」という方法が現実的であると思います。

真正な登記名義の回復による移転登記

次の「真正な登記名義の回復による移転登記」について説明いたします。

登記名義を正しい内容にする場合、「錯誤」による場合も「真正な登記名義の回復」による場合も、内容としては同じです。本来の実態に合った内容に戻すことになります。

登記原因証明情報の作成

登記申請をするには、基本的に(例外を除いて)登記原因証明情報を作成し法務局に提出します。
真正な登記名義の回復による移転登記の場合も、登記原因証明情報を作成します。
この場合、どういう理由・原因で、すでに登記した内容が間違っていたかを記載します。

なお、次の内容の記載を要する場合もありますので、申請する法務局に確認した方がよいでしょう。
「本件不動産には、令和〇年〇月〇日受付第〇〇〇号で抵当権が設定登記されており、錯誤による所有権更正の方法では抵当権者の承諾書を要するところ、これを取得することができないため、真正な登記名義の回復による移転登記の方法とする。」
(実例:令和2年、大阪法務局堺支局で登記)

登記費用を計算します。

ご相談者が「手付金やその他諸々の費用」を現実的にご負担されていたということですので、
売買代金を仮に4,500万円、手付金を仮に400万円、諸費用を仮に100万円、合計500万円をご相談者が現実的にご負担されていたとします。

ご相談者の本来の登記上の「持分」は、
500万円÷4,600万円(4,500万円+100万円)=0・1 →持分10分の1

実費
登録免許税について
土地・建物の「評価価格」を仮に4,000万円で計算します。
4,000万円×1/10=400万円
400万円×2%(移転登記の税率)(×0・02)=80,000円

実費
登記記録情報/事前確認/土地・建物2通(334円×2)=668円
登記事項証明書/完了後/2通(480円×2)=960円

司法書士報酬:46,000円(税抜き)

合計:132,228円(消費税込み)

必要書類と印鑑について

登記義務者:ご主人(持分が10分の1減り10分の9となる。)

  1. 登記識別情報通知(権利証)
  2. 印鑑証明書  1通
  3. 固定資産税の課税台帳登録事項証明書(土地・建物)
  4. (実印)(登記用委任状と登記原因証明情報に押印いただきます。)
  5. 身分証明書(運転免許証など)

登記権利者:ご相談者の奥様(持分10分の1を得ることになる。)

  1. 住民票    1通(世帯全員が記載されたもの)
  2. 認印
  3. 身分証明書(運転免許証など)

スケジュールについて

次の順番で手続を行います。

  1. 必要書類のご用意
    必要書類を郵送していただくための「封筒」郵送
  2. 登記所へ提出する書類の作成
  3. 登記所へ提出する書類に署名、押印
    実費のお支払い(お振込み)
  4. 登記申請(完了まで約2週間)
  5. 登記完了書類の受領
  6. 登記完了書類のお渡し(郵送)
  7. 報酬のお支払い(お振込み)

税金関係

登記しますと、その内容は、法務局から税務署、市区町村役場、都道府県税事務所に通知(登記事項証明書の内容を通知)することになっております。これらは、税金に関することになるからです。

国税

ご主人には譲渡所得税の問題、ご相談者の奥様には贈与税の問題が発生します。

今回の真正な登記名義の回復は、譲渡、売買や贈与ではなく、純粋に、本来の名義(持分で)に正しく直すことから、基本的には、譲渡所得税や贈与税の問題は生じません。
ただし、正しい名義に変更することを税務署に対して直接的、間接的に証明する必要があります。
通帳の記載でお金の流れが証明できれば問題ありません。
なお、移転する持分に相当する金額が110万円以内であれば、贈与税の問題を生じません。
ご相談者の場合、上記の例で500万円ですので、これを負担していたことを証明する必要があります。

こういうこともありますので、不動産を購入する場合は、夫婦、親子と言えども、万が一のこと後々のことを考え、お金の流れを証明できるように、現金でのやり取りではなく、振込みで行うのがベストです。

不動産取得税

不動産を贈与や売買で取得した場合、所有権を取得した人は、都道府県の不動産取得税の対象となります。

今回の真正な登記名義の回復は、売買や贈与ではなく、純粋に、本来の名義(持分で)に正しく直すことから、基本的には、不動産取得税の問題は生じません。
ただし、正しい名義に変更することを都道府県税事務所に対して直接的、間接的に証明する必要があります。
通帳の記載でお金の流れが証明できれば問題ありません。

もっとも、最近の建築であり、居住用不動産の取得対象不動産であれば、軽減適用がありますので、土地と建物の移転登記であれば、不動産取得税がかからない計算となります。

なお、不動産を購入する場合は、買主が共有名義で購入する場合の持分計算を参考にしてください。

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