不動産売買登記と権利証がない場合(債権者代位登記)

不動産売買登記と権利証がない場合(債権者代位登記された売主)

不動産売買登記の際、必要となる権利証について、ここでは、売主が債権者代位によって登記された場合の権利証について説明いたします。

権利証には、「登記済権利証(とうきずみけんりしょう)」と「登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)」があります。
「登記済権利証」は、登記上、「登記済証(とうきずみしょう)」といわれるものですが、特に、所有権に関する「登記済証」のことを「登記済権利証」といいます。

「登記識別情報」は、不動産登記法の改正によって、現在、発行されているものです。
実際には、「登記識別情報通知」という名称(タイトル)で発行されています。

登記識別情報は、不動産売買登記などによって、新たに所有権(持分)を取得登記した場合に、 新たに登記名義人となった人に対して発行されたものです。

債権者代位によって所有権(または持分)の登記があった場合 

債権者代位とは、債権者が債務者に対する債権を保全するために、本来、債務者がすべき権利の手続を債権者が債務者に代わってすることをいいます。

登記手続の場合、例えば、債務者の有する相続権を債権者が自己の債権を保全するために、債務者に代わって、相続人名義に相続登記手続をすることをいいます。

具体的には、よくあるのは、公的な機関の債権者代位登記です。
例えば、債務者である相続人に対する税金の滞納による差押や相続税の滞納による税務署がする抵当権設定登記をするために、代位によって相続人名義に相続登記を税務署や市区町村役場がします。

この債権者代位による相続登記の場合、相続登記完了後に発行される、とされる権利証は、どうなるのでしょうか。

不動産登記法改正前は、債権者代位の場合でも、登記済権利証が発行されていましたが、この登記済権利証は、登記所から債権者に手渡されたものであるので、現実的には、債務者である相続人に手渡されることはありません。

また、不動産登記法改正後の現在発行される「登記識別情報通知」は、債権者代位による相続登記などの場合には、発行されません。

どちらにしても、債権者代位によって登記された場合、登記名義人である売主には権利証がない状態となります。

その他、例えば、債権者代位による相続登記が、法定相続人3名名義で登記された場合、それぞれ持分3分の1ずつ登記された後、法定相続人の間で遺産分割協議が成立し、法定相続人のうちの一人Aさんが、他の法定相続人の持分3分の2を遺産分割で取得登記した場合は、どうでしょうか。

遺産分割による持分3分の2の移転登記によって、相続人のAさんには、新たに登記識別情報が発行されます。
Aさんの登記識別情報である権利証は、不動産の3分の2の権利証であるので、残りの3分の1の権利証がない状態となります。

この場合、相続人Aさんは、その時点で、登記所で登記識別情報を新たに発行してもらうことはできません。また、この時点で、権利証に代わる手続をすることもありませんし、できません。

権利証がない場合、権利証に代わる手続は、実際に、不動産売買登記など所有権移転登記をする時点で、権利証に代わる手続をすることになります。

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